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ボビー・フィッシャーを探して/愛のエチュード
 たまには随筆めいた乱文でもつれづれなるままに書いてみる。映画の感想も書くのでネタばれが嫌な人は注意してください。もっともこのようなマイナーなチェスブログを読んでいる人はすでに観たことがある作品だろうが。

 週末に調べ物があり県立図書館に足を運んだ。美術館も隣接しており、何かを学んだつもりになったり、感性を磨いた気分になるのに丁度良い場所だ。私の感受性の乏しさ故か、はたまた浅学非才な身故か、図書館や美術館、科学館といった場所は作品や書物そのものよりその場の空気や雰囲気を楽しんでいる。

 司書の中に熱心なチェスファンがいるのであろうか?我が県の県立図書館には日本語で書かれたチェスの本のおおよそがそろっている。『
百万人のチェス』を高校生の時に読めたことを感謝したい。さらにはJCAのChess通信が電話帳のような分厚さで3冊に別れて保管されていたりもする。これも高校生の時に一通り目を通した。再読してみたい気もするがあいにく別の目的があり借りてこなかった。

 調べ物を済ませた私はAVコーナーに向かった。良かった。誰も借りていない。目的の作品はあっさりと観ることがてきた。『ボビー・フィッシャーを探して』だ。
 私はてっきりFischerの伝記だと思っていたが違った。
 あらすじはジョジュ・ウェイツキンという少年がストリートチェスで才能を見いだされ、父親の支援でコーチの下に付いて競技としてのチェスを鍛えられ、最後には全米ジュニア(U-12かU-14?)で優勝する話だ。
 映画監督が撮りたかった主題ではないだろうが、私にはストリートチェスと競技チェスの対立軸が見えた。ストリートチェスは現代ならインターネットを用いた超早指し戦と言い換えられるだろう。どちらがチェスとの付き合い方として良いのかは各人の棋力や目標、楽しみ方によるから何とも言えない。

 その後は『愛のエチュード』も鑑賞してみた。ちなみに原作の『ディフェンス』は読んでいない。
 ヒロインのナターリアがルージンのどこに惚れたのか理解できない。私はルージンの才能を持つ者にありがちな社会不適合者の側面に対して魅力より恐怖を感じるから。
 ナターリアの母親が精神を病んでしまったルージンに付き添う娘に対して「貴女は精神病棟にまで一緒に行く気なの?」。むしろこの親心の方に共感してしまった。
 さらにはルージンの対戦相手であるイタリア人トゥラチが好漢で、私の中ではルージンが霞んでしまった。トレーナーのヴァレンチノフは解りやすい悪役(トイレトラブルのDanail○vを思い出した)だったが、彼と組んだトゥラチは紳士だったのだ。
 それが最も顕著だったのが婚約者を失ったナターリアに対して「世界チャンピオンによる不滅のエチュードでした」とルージンを讃えたシーンだ。打ちのめされた直後にこういう気の利いたセリフが言える奴はカッコいい。

 どちらも2時間ほどの上映時間なので暇な半日には観ると良いだろう。

 ここで書き終えようと思ったが最後に古典の棋譜から局面を紹介しよう。
 古い棋士では私はTarraschが好きだ。教条主義だと批判されることもあるが基本や原則を大切にする姿勢は見習うべき美徳だ。何よりチェスについて語った言葉がいい。

 “チェスは音楽と同じように人を幸せにする力を持っている” 
                                                                   Siegbert Tarrasch

 音楽を聞きながらTarraschのゲームを見てみよう。
 
ニコニコ動画 人生のメリーゴーランド ドイツ語Ver

 

 S.Tarrasch vs R.Reti 1922年 1-0  Position after 32...Kg8

 満60歳になるTarraschと33歳と脂の乗ったRetiの対局。
 Retiはこの2年後にCapablancaの不敗記録に終止符を打つ。ハイパーモダン派がチェス界を圧巻し新時代の到来を告げようとしているのに対してTarraschは抗う。

 上図ではRがセブンスランクに入り込み、すでに白が良い。33.Rxe6で問題ないが、そうすると対局は長引いてしまう。

 
33.f3
 まずはe4を支配してNの動きを制限する。

 33...Ne8
 いや、33.f3はNを制限するどころかNを取る狙いが含まれていた。
 この手以外だと、例えば33...Re8 34.Rg7+ Kh8 35.Rf7 Nh5 36.g4 Kg8 37.Rc7 Nf6 38.Bg7などでポジションの優劣からマテリアルの差に変換される。

 
34.Kh2
 ここでTarraschが動かしたのは何とキング!!
 以下黒マスを闊歩してKf6とたどり着いたところでRetiは投了。
 Kf7・Bg7#の終局図が解れば投了後の手順はさほど難しくないだろう。

 
34...Nd6 35.Rg7+ Kh8 36.Rd7 Nb5 37.Kg3 Nxc3 38.Kf4 Nb5 39.Ke5 Re8 40.Kf6 1-0
 相手のweak squareを使ってKがチェックメイトに加担する美しい勝ち方だが、同年に後の世界チャンピオンが同じようにKで相手を追い詰めるいるせいか、こちらの印象が薄い。 
A.Alekhine vs F.D.Yates 1922年 1-0

 ダブルBサクリファイスの名局である1914年のNimzowitsch戦が、Laskerの二番煎じと言われて名局賞を逃したり、Tarraschは誰かの影に隠れてしまう薄幸なイメージがある。でも彼は常にチェスを学ぶ者たちの教師であり続ける。これからもずっと。
author:ゆずゆぐ, category:お知らせ・雑記, 05:16
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